「ユリちゃんはさ、芸能人のこと好きになったりしないの?」

 アイドル紙を広げてみせてくれる。ゼミ長と目があっちゃった。”今日は団らんの外で見守るポジションは無理そうだな”って感じの苦笑いをしている。

「たとえばこの俳優!この顔で背が高くて優しくて、しかもうちの大学の卒業生なんだよ?」

「うーん、そうね。素敵だとは思うんだけど…」

「やっぱり好きになったりはしないのか〜」

 ごめんね、一緒にはしゃげなくて。心のなかで謝ってみた。

 だけど優等生のお王子様なんて、付き合ったって三日で飽きると思うの。だから残念だけど、その情報だけで興味アンテナは立たないかな。やっぱり人間、面白みや魅力がなきゃ。欠点でもいいからさ。

 あ、ゼミの先生が入ってきた。

「ほら、授業はじまるわよ。課題になってたレポート持ってきた?」

 高らかに持ってきたという彼女たちの後ろで、”やっば”という一声が。声の主は菓子パンをかじってた子。ゼミの単位まで落とさなきゃいいけど…