課長、ちゃんとしてください。

ゆっくりと動く人波を切り裂くように歩いていると、土産物屋が立ち並ぶ三年坂に出た。




昼時になって、足下の石畳が見えないくらいに観光客たちがひしめいている。



焼きたての煎餅や、抹茶のソフトクリーム、最中に包まれたコロッケなどを手に、楽しげに土産物を物色する人々。





それを眺めながら歩いていると、追いついた課長が、「あべちゃん」と声をかけてきた。






「見て見て~、これ、かわいくなぁい?」






どこぞの女子高生のような口調で課長が示したのは、ひと気のない薄暗い雑貨屋の店先に並べられた手鏡だった。



京ちりめんの生地が貼られていて、赤や黄や青、さまざまな色が並んでいる。






「………はぁ」






あたしは気の抜けたような声で相づちを打って、小さな手鏡を眺めた。