夏に蒔いた種が蕾をつけだした秋の花壇。
 
小宮は毎朝の水やりを欠かさなかったそうだ。
 
 
半分押し付けられたような花壇係だったけど、花を育てる難しさを知って。色々調べてるうちに夢中になってて。
 
いつのまにか、成長していく草花を見るのが毎朝毎夕の楽しみになっていた。
 
 
その日もささやかな自分の庭を観察しに、放課後、裏庭に向かったそうだ。
 
 
だけど弾んだ足は、裏庭の手前で止まってしまった――
 
 
 
『んだよソレ、ひっでぇヤツだなお前』
 
『ヒトのコト言えっかよお前ら』
 
『やるコトやっといてポイ捨てサイコー!』
 
『そうそう、こないだもよ……』
 
 
 
ガラの悪そうな男子生徒達の話し声。
 
花壇から聞こえてくる大きな笑い混じりの会話に、小宮は思わず引き返してしまった。
 
 
だけど花壇が気になって、校舎の三階まで上がり、窓から裏庭を見下ろしてみれば――
 
 
 
花壇を踏み荒らす、数人の男子生徒達の姿。
 
 
 
衝撃のあまり、窓辺に立ったまま硬直してしまったそうだ。