隆太郎のグラスの中で氷が音を立てた。

ちらりと横顔を盗み見ると、伏せた目が影を落としている。



「……」



あの頃は本当に不安に押し潰されちゃいそうだった。

それでも、隆太郎の言葉を信じようって。

想いがあれば大丈夫って、自分に言い聞かせてたの──。





夏休みが終わり、みんな本格的に受験モード。

って言っても、夏休み前からみんなちゃんと勉強してたけど。



「峰、帰ろ」

「うん」



話していた友達に別れを告げ、隆太郎の隣に並ぶ。



「それでさ、今日佐伯が体育でボール踏んで……」



いつもと変わらず明るく話す隆太郎。

他愛ない会話に、私も自然と笑みがこぼれた。



「あ、そうだ。今から暇?」

「暇だけど……なんで?」

「今、家に誰もいないからさ、映画でも見ねぇかなって」