もうすぐ日付が変わるというのに。

けど隆太郎は小さく笑って、



「悪りぃ。……どうしても今日のうちに話しておきたいと思って」

「……うん」



言葉を選んでいるのか、隆太郎の目は行ったり来たりしている。

そして、漸く決心がついたのか私の目を見てゆっくりと口を開いた。



「……美容師になりたいってこと……言えなくてごめん」

「……うん」

「昔から姉ちゃんの髪いじるの好きで、喜んでもらえたときは本当に嬉しくて。だから、美容師になるってことはずっと俺の目標だった」



君の夢、初めてちゃんと聞くね。

もしかしたら私、“今”しか見れてなかったのかも。

今が楽しいから、2人の未来について考えてなかった。

隆太郎はちゃんと、これからも変わらないって言ってくれたのに。

私達の未来を見据えてくれていたのに。



「その夢を追えば、間違いなく俺等は今のままじゃいられなくなる。こうやって気軽に会える機会も少なくなると思う」

「うん」

「でも、昼間も言ったように、峰とは何も変わらないって信じてるんだ。離れてたって、電話で毎日話せる」

「ぬくもりは……感じられないよ」