蝉の鳴き声が無駄に煩く感じた。

言葉が出てこなくて、ただ隆太郎を真っ直ぐに見つめた。

隆太郎は複雑そうな表情を浮かべて、



「俺……東京の専門行こうと思ってんだ」



って苦しそうに言葉を絞り出した。

東京というものすごく簡単な単語が巧く飲み込めなくて。



地元から東京に通うのはまず不可能。

じゃあ私達は……



「遠距離……?」



言葉にして、また苦しくなって。

隆太郎の顔を見ることはもう出来なくて、私は唇を噛んだ。



「……黙ってて、ごめん」

「……」

「でも俺、峰とはこれからも変わらないって思ってるから。だから、大丈夫だよ」



何が大丈夫なの?

私、不安だよ。

ずっと一緒だったから、隆太郎が傍にいない毎日なんて考えられないよ。