君のココロの向こう側

まだ君のこと忘れられてないよ、なんて言いたくない。

私も前に進んでるんだって、嘘でもいいから感じてほしい。



「……髪、ボサボサだよ。そんなままじゃワンピが可哀想」



言いつつ瑞穂がバッグから取り出したのはポケットサイズのヘアアイロン。



「瑞穂……」

「やりすぎず控えめに、でいいんでしょ?さっさとメイク直さなきゃ時間来ちゃうよ」

「……ありがと」



瑞穂の心意気に感謝しながら、私はメイクポーチを開けた。





「それじゃ……行ってくるね!」



駅で瑞穂と別れ、指定されたバーに向かう。

思ってたよりも近いところにあったそこは、大人の雰囲気漂うお洒落なお店だった。



──カラン……

一歩中に入ると、BGMに流れているジャズが耳に入ってきた。



「……」



お店の奥のカウンターに、今朝見た服装の男の人。

──ううん、服が同じじゃなくてもわかる。