君のココロの向こう側

周りの人にも一通り頭を下げ、鏡の中の隆太郎を真っ直ぐに見る。



「でも智也くんの苗字、前田って……」

「あぁ……。義兄さんも前田って苗字だっただけだよ。だから姉ちゃんの苗字変わんなかったんだ。どこにでもある名前だろ」



わりと重要なことを何でもないことのように言われ、頭が混乱してしまう。



「てことは……昨日智也くんを連れてきた綺麗な人って……」

「あぁ、うん。姉ちゃん」



そう言えば付き合ってた頃、お姉さんの存在は聞いてたけど、会ったことなかったな……。



「じゃあ、この前智也くんのお迎えに来たのは……」

「姉ちゃんも義兄さんも仕事で行けなかったから、俺が頼まれたんだ」



そしたら、と続けられた言葉。



「お前がいた」