今宵、月下の夜に

「何とか言えっ…!」


パパの怒鳴り声が響く。



すくんでいた足がようやく動き再び後ろに後ずさりする。


が、壁に塞がれて行き止まりとなってしまった。


やがて私の目の前まで来ると首筋に両手をかけようとするパパ。


なんで…パパ


涙で視界が歪む。


近づく手。それは確かに首筋に向かっていた。


「汐里…お別れだ」


乾いた声でパパが言ったほぼ同時だった。


家のインターフォンが鳴り響いたのは。




うちは私が嫌がるからとメイドは雇っていない。

かわりに出る人がいないため、パパが玄関まで行く。


「郵便です。こちらに署名をお願いします」


若い男性の声が聞こえた。


軽く雑談をする二人。


そのやりとりを呆然と聞いていた。


ゆっくりと座り込む。手足の震えが止まらない。


パパ…いったいどうしたの?

パパは私を殺したいの…?


ねぇ…教えてよ



パパの放り投げられた鞄からは保険案内のパンフレットが落ちていた。