「MCなし、ぶっ通しでガンガンやります! どんどんノってきてください! では、お聴きくだ……」 “……さい” あたしの言葉に、荒っぽく開くドアの音が重なった。 冷えた夕闇を背負って。 帽子とマフラーとコートで防寒して。 細身の男が、そこに立ってる。 両手には、やたらかさばる形の紙袋。 ケーキの箱とかが入っていたら、あんな形の袋になるかもね。 弘樹だ。 空白。 沈黙。 言葉も動作も、とっさに何も出ない。 ほっぽり出されたマイクが、スピーカーをツーンと鳴らす。