フキゲン・ハートビート



洋服を取りだしたので紙袋をたたもうとすると、まだちょっとした膨らみがあって、なにか荷物が入っていることに気がついた。

ビニールの小さな袋と、
ちょっと素敵な包装紙にくるまれている箱。

どうやらふたつともお菓子みたいだった。


「ええ……?」


なんだ、これは。

もしや寛人くんチョイスではないだろうな?

だって、こんな洒落た、モテ男子みたいなことをできるような男ではなかったでしょうに。


そう思いながら取りだして見てみる。

まあ、案の定というか、どちらも寛人くんからではなかった。


そりゃそうだ。
むしろ違っていて、なんならちょっと安心さえしている。


『蒼依ちゃんへ。洸介・季沙より』


かわいい文字に、かわいい男女のイラストが添えてあるメモ帳が、透明なビニール袋にぺたっと貼りつけられていた。

そのなかにはおいしそうなクッキーがたくさん入っている。


ためしにひとつ食べてみた。

とたん、手づくりっぽい、あったかい感じの風味と、びっくりするくらいのおいしさが口のなかいっぱいに広がった。


「え……プロか?」


ほどよいバターの香り。
サクサクとふわふわの絶妙なバランス。

本当にプロのレベルの味がする。


洸介先輩と季沙さん、もしや、ふたりの手づくりなのかな。

一生懸命クッキーづくりに励んでいる洸介先輩を想像するとチョット笑いそうだ。


でも、ああ、いいな。
季沙さんと洸介先輩がいっしょにキッチンに立っているところ、スゴイ想像できる。