フキゲン・ハートビート



あの男――大和と出会ったのは、大学に入学してすぐ、新奈とまわった新歓で。

彼はソフトボールのサークルの4年生だった。


ぶっちゃけ、第一印象だけでいえば、ぜんぜん好みじゃなかった。

でも、彼は緊張しっぱなしの新入生だったあたしを気にかけ、たくさん話しかけてくれたのだった。


無邪気に笑ってくれた。

そのくせ、時折、大人っぽい顔をした。


なんといってもつい先日まで女子高生だった、おバカな18歳のあたしは、すぐにそのすべてに惹かれてしまった。

変にセットしていない髪も、ソフトボールで鍛えられた体も、煙草を吸うのだって、もう全部がかっこよく見えて。


たぶん先に好きになったのはあたしのほう。

でも告白は、大和からだった。


「そろそろカノジョになる?」って、そのおどけた言い方が大人っぽくて、有頂天になってしまった。

あたしが返事をする前に、煙草のにおいのキスをされた。


本当に、幸せだった。


大和はいつだって優しくて、大人で、なのにちょっと抜けているところもあって。

なにより、あたしのことをすごく大切にしてくれた。


愛されていた。


愛されていると、思っていた。