オーナーさんがいれてくれた香ばしいホットコーヒーを窓際のテーブルまで運ぶ。
幸い、いまは俊明さん以外にお客さんがいないし、少しくらいならゆっくり話すこともできそうだ。
「お待たせいたしました、ホットコーヒーです」
「ありがとう。……あ、そうだ、これ、忘れないうちに」
手渡された紙袋はマットなブラックだった。
きっとまっくろくろすけな寛人くんチョイスだろうと、すぐにわかる。
「ありがとうございます! ひろ……半田くんにも、お礼言っといてもらえるとうれしいです」
「あれ、もしかしてヒロの連絡先知らなかったりする?」
「あ……実は、そうなんです。交換するタイミングもなくて」
「うわ、そうなんだ。だから今回も俺がパシリに使われたわけだな、そうか、なるほど」
そうなのでございます。
けれども、こちらに有無を言わさずそう提案したのは、200%あの男でございます。
という文句は口にしなかった。
それに、結果的に使い走りにしてしまったのは事実なので、申し訳ない気持ち300%で大人っぽい横顔を見つめていると、俊明さんがおもむろにスマホを取りだしたのだった。
「じゃあ、俺から教えといてもいいかな、ヒロの連絡先」
「えっ」
「あいつアプリのメッセージはやらないから、番号とアドレスだけ、蒼依ちゃんとのトークに送っとくよ」
言いながら、俊明さんはすぐさまあたしとのトーク画面を開き、なにやらせっせとコピペをしているようだった。
どうやら本当に寛人くんの連絡先を送ってくれているらしい。
この人は、こんなにかっこよくて、優しくて、和み系なうえに、仕事も迅速なのか。



