フキゲン・ハートビート



「……どうしてそんなふうに言いきれるわけ」


でも、いざ誰かにこう言われると、ちょっとむかっとくるというか。


友達の気持ちを踏みにじるようなこと、こんなふうにほかのやつに言われたくない、なんて。

そんな、どうにもお門違いなことを思ってしまう。


「そんなの、あのふたり見てたらわかるだろ。ほかの誰かの入る隙なんてどこにもねーよ」

「わ、わかんないじゃん! 新奈だって本気で洸介先輩のこと好きで……」

「本気だろうがなんだろうが、無理なもんは無理。兄貴にも、トシさんにも、みちるさんにも聞いたらいいよ。きっとみんな同じこと言う」

「なんで……そういうことが、平気で言えるわけ」


この男は恋をしたことがないのか。


誰かをどうしようもなく好きになる気持ちがわからないから、そんなことが言えるんだ。

きっとそうだよ。


血も涙もない、
本当に冷たいやつだ。


「……おまえは、なんなんだよ? じゃ、結局どうしたいわけ?」


少しの沈黙を守ったあと、やがて静かにスプーンを置いた半田くんが、幾分か低い声で言った。


「ニイナのこと応援できない、ってきのうは泣いてたくせに、いまおれにそんなふうに怒って、矛盾してるだろ。どうしたいんだよ? 応援すんの? しねえの? なんなんだよ?」


半田寛人は冷たいやつだ。

でも、きのう、新奈にとって、あたしは同じように冷たいやつだったのかもしれない。


ああ、そうか。
きのう、あのとき、新奈はひょっとして、こんな気持ちだったのかな。


わからないけど、わかる。

いま、わかったような気がする。