フキゲン・ハートビート



そんなに会話は弾まない夕食だった。

半田くんは男の子のわりに食べるのがゆっくりだ。
もともと食の細いタイプの人なのかもしれない。



「――ニイナ、とかいったっけ。あの関西弁の友達」


トマト煮とオムレツをすでに食べ終え、スープに口をつけている半田くんが唐突に言った。


「うん。新奈がどうしたの?」


まさか、あたしが記憶を飛ばしてるあいだに、なにか大変なことをしでかしたのではなかろうな?


「洸介さんのこと好きだって」

「え!?」


どうしてあなた様がそれを知っている!?


「おまえがきのう泣きながら勝手にしゃべったんだろ。記憶にないと思うけど」


半田くんがあきれたって感じに言った。


「つ……つかぬことをお聞きしますが」

「おれ以外は聞いてないから、安心すれば」


よかった。
いや、よくないが。


いったいなにをどこまで話してしまったのだろう。

しかも泣きながらって、また、本当にみっともない……。


「きのう、おまえ、いろいろ言ってたけど。洸介さんが季沙さん以外の人間にブレることは絶対にない。それは断言してもいい」


……それは、あたしだって、わかっている。


そう、だから『やめとけ』と言ったし、それはもちろん新奈を思ってのことだった。

結果として、それが変に裏目に出てしまったわけですが。