フキゲン・ハートビート



顔を洗い、化粧水と乳液でケアをする。

鏡に映っている自分の顔を眺めながら、見事なまでにすっぴんだなあ、と思った。


……こんな顔を半田くんに見せるのか。

なんて、いまさらか。
昨夜、すでにもっとヒドイ姿をさんざん見せてしまったのだった。


リビングに戻ると、なんだか無性にそわそわしてしょうがなかった。

見覚えのないソファにテーブル、ウチにはないような立派なカウンターキッチン……。


とてもシンプルな部屋だ。

ものすごく半田くんっぽい、無駄なものはいっさいないって感じの部屋。
家具さえもシンプルなつくりのものばかり。


やっぱりそわそわする。

することだってなにもないし……。


……あ、そうだ。

ゴハンでもつくろうかな。お礼と、お詫びに。
キッチンも好きに使っていいと言ってくれたし。

でも、人のつくったゴハンとか、半田くんって嫌がりそうな感じがするな。

どうなんだろう。

わからないや。


そう思いをめぐらせつつ、部屋をウロウロしていたところで、ふいにナチュラルブラウンの引き戸が開いた。

どうやら音もなく半田くんが帰ってきたらしい。