フキゲン・ハートビート



洗面所は、リビングを出てすぐ右手のドアのむこう側にあった。

意外とアッサリ見つかったことに安堵しつつ、明かりを点けて洗面台に向き直るなり、絶句。


だって、そこには、洗顔にクレンジングに化粧水、乳液までがお行儀よくならんでいたんだもの。

といっても全部が小瓶のサイズで、コンビニに売っているようなものだ。


そのすべてが新品だったから、嫌でもわかってしまった。

これ全部、半田くんがあたしのためにそろえてくれたに違いない。
ああ、おまけに未開封の歯ブラシまで置いてある。


ホテルかよ。
アメニティが充実しすぎだよ。

それと、クレンジングとか、乳液とか、よくわかったな。女子かよ。


そう、きっと彼のこういうところを、あたしはきのう「A型っぽい」と発言したのだ。


「……ありがとうございます」


思わず、洗面台にむかってバカみたいに深々と頭を下げる。


不機嫌なまっくろくろすけが帰ってきたら、もういちどシッカリ頭を下げよう。

またウゼェって言われるかもしれないけど、そうしよう。
絶対しよう。