最後にキサさんからのメッセージを開く。
名前、“季沙”と書くんだな。
響きだけじゃなく、字面もきれい。
『こんにちは、相川季沙です。蒼依ちゃん、きのうは楽しい時間をありがとう。蒼依ちゃんとはあんまりお話できなかったから、今度はもっとたくさんおしゃべりしようね!
それから具合は大丈夫ですか? けっこうフラフラになってたから、きょうはどうかゆっくり休んでね。』
全文、あのかわいらしい声で脳内再生された。
酔いつぶれて醜態をさらしたあたしなんかに、わざわざこんな文章を送ってくれて。
おまけにさりげなく『今度』なんて気遣ってくれて。
それから、『お大事に』っていうクマさんのスタンプもかわいいし。
ほんっとうに、いい人だなあ。
こんな素敵な女性に新奈が敵うわけない。
さっさとあきらめたほうがいい。
そこまで考えて、また頭痛が復活した気がした。
バカバカしい。
このことにはいっさい口出ししないってもう決めたんだ。
季沙さんに、お礼と謝罪、それから洸介先輩への挨拶をお願いした返事を送り、のろのろとベッドを出た。
少しだけ肌寒い。
顔を洗おうと、洗面所を探している途中で、中学のころの同級生がなかなかいい部屋に住んでいる事実に気がつく。
あたしなんか8畳の1Kだというのに。
人生とは実におかしいものだな。
ほんの5年前までは同じ教室で同じ授業を受けていたはずなのに、いまではこんなにも生活水準が違っているのか。



