フキゲン・ハートビート



それからもべつだん会話はなかった。

なんとなくお酒を飲んで、なんとなくおつまみをつついて、カラになったらまた新しく飲みものを頼んで……と、そんな感じ。


もう何杯飲んだかわからないけど、何回目かの注文をしようかとしたところで、ふいにスマホがぶるっと震えた。

見ると、新奈からメッセージ。


……なんだろう? この至近距離で。


『トイレ集合』


「はあ……?」


なにかと思い、新奈のほうに視線を向ける。


でも目は合わなかった。

それどころか新奈は「ちょっとお手洗いに~」と言って、すでに立ち上がっていた。


「……ゴメン。あたしもちょっとトイレ」


そんな報告いらないかなと思ったけど、いちおう半田くんに告げておく。
わかってはいたものの、案の定、返事はもらえなかった。


……あれ、ていうか、うわ、やばい。

思ったよりアルコールがまわっている。
足元がふわふわする。


ダメだ、帰ってきたらまず、お冷をもらおう……。