「おまえも、ビール?」
「え?」
「2杯目。ビールでいいのかよ」
「あ、うん……」
またも意外を発見してしまう。
カラになったあたしのジョッキを、あの半田寛人が、自分の分といっしょテーブルの隅っこへ移動させてくれている。
ついでに2杯目まで聞いてくれた。
なんとなしに呼び鈴をポチっと押して、ふたつ並んだジョッキを眺めながら、やはりおかしな気持ちになった。
なんとなくきょうはすぐ酔っぱらってしまいそうな、ふわふわした感じがした。
店員さんに半田くんがビールを追加注文してくれたら、すぐさま目の前にふたつの中ジョッキがドンドンッと運ばれてきた。
半田くんと、あたしの分。
白くてきめ細かい、やわらかそうな泡の下に、黄金に輝く液体。
しゅわしゅわのぼっていく小さなツブツブ。
「……プハァ~ッ」
ああ、やっぱりムギシュって最高だ。
「それ、やんなきゃ気が済まねえの?」
「もう、いちいちうっさい……な」
中途半端なところで言葉が止まってしまったのは仕方がない。
だって、あきれたようにそう言った半田くんは、チョット笑っていたのだ。
ニッコリしてくれたわけではないけど。
見えたのは横顔だけだけど。
でも、笑った。
薄いくちびるがクイッと、遠慮がちに、だけどたしかに、上に向かって、動いたのである。



