「……なんか、変な感じ」
もう少しでカラになるジョッキ。
それに貼りつく水滴を指先でなぞりながら、なんとなくこぼしてしまう。
無視されてもいいや。
半田くんに話しかけているわけでもないし。
こんなのは、ただのひとりごと。
「なにが？」
それなのに、ふいに半田くんの声が聞こえたので、正直ものすごく驚いた。空耳だった？
ななめ下に向いた視線は動かないままだったけど、それでも、あの半田寛人があたしの言葉に反応してくれるなんて、夢にも思わないじゃない？
「まさか半田くんといっしょにお酒飲む日がくるなんてなーと思って！」
うれしくなってしまった酔っぱらいの気持ちを押し殺しつつそう言い、残りのビールをいっきに飲んだ。
半田くんはなにも答えなかった。
今度はこっちを見ようともしない。
返事をする基準はいったいなんなのだろう？
べつに返事が欲しくて言ったわけでもないけれど。
ああ、本当に会話が続かないな。
「……あんたってさー。こういう飲み会来て、ちゃんと楽しいワケ？ いつもそんな感じなの？」
「べつに。アルコールは好きだからついて来てるけど、だいたい飲んでるだけ」
「ふうん……」
お酒、好きなのか。それは意外。
アルコールより断然ミネラルウォーターな男かと思っていた。
これはあたしの、ものすごく勝手なイメージ。
