フキゲン・ハートビート



――かんぱーいっ

と、当たり前みたいに音頭をとってくれたのはアキ先輩。


同時にみんながアルコールを体内に流しこんでいく。


あたしも同じように黄金の液体を喉に注いだ。

あー、ウマイなあ。
キンキンに冷えたビールの最初のひとくちって、なんでこんなにおいしいんだろう。


「プハァ~」


思わず声が出てしまうね。


「……プハーて、色気もクソもねえな」


早くもエイヒレに手を伸ばしていたネコ顔が、ちょっと引きぎみにコッチを向いた。
といっても、顔を向けてくれたわけでなく、瞳をチョロッと動かしただけだ。


「うっさいな。そうやって飲んだほうがおいしく感じるんですー」


言いながら、あたしもつられてエイヒレに手を伸ばす。

半田くんはなにも言葉を返してくれなかった。
やっぱりウザがられてんのかな。

べつに、いいけど。


運ばれてくる料理を黙々と口に放りこみ、それをビールで胃袋に送りこむ。

そんな単純作業をくり返すだけの時間がしばらく続いた。


……あーあ。
すでに盛り上がっているテーブルの右半分とは、なんだか、別世界。


半田くんは自分の席で淡々とビールを飲むだけだ。
むこうの会話に参加しようともしないし、そもそも聞いているのかすらわからない。

そんな男をあいだに挟んでいるもんだから、あたしもみんなの会話には参加できなくて。

正面にいたはずの俊明さんは、いつのまにかミチルさんに絡まれているし……。