フキゲン・ハートビート



居酒屋はこぢんまりとした個人経営のお店だった。
完全個室制で、部屋自体は和室のお座敷なものの、インテリアや雰囲気は完全な洋風だ。

こんなお洒落な飲み屋さんが、あまいたまごやきのみなさんの行きつけらしい。


席順はてきとうだった。
だいたい、入った順。

そうしたら、おのずと新奈は洸介先輩の右隣に座っていたし、その反対側にはキサさんが座ることになっていた。

これはマズイと一瞬思ったけど、新奈がどれほど洸介先輩を好きなのかはここ最近で痛感しているので、とりあえずは見守ることにしてみよう。


ちなみに、その隣には俊明さんが座った。

アキ先輩とミチルさんカップルは、洸介先輩たちの正面に並んで座った。


……そして、あたしはというと。


「どうしてこんなことに……」

「は?」


きょうはじめて耳にした気がするこの声。
それが発したのは、すごくイヤそうな『ハ』の音。


こっちが『ハ』だっての。

半田寛人め。


「……なんでもございません」


信じられない。
どうしてよりにもよってこいつの隣なんだろう?

しかも左側には誰もいないし、アキ先輩の顔は見えないし、なんだかなあ。

唯一の救いといえば、正面に俊明さんがいてくれているということだけ。
ああ、あたしの和み。