席に案内されている途中、俊明さんがコソッとこちらにやって来て、なぜかお礼を言われた。
「きょう、来てくれてありがとう」
「そんな! こちらこそ誘ってくださりありがとうございます!」
「あはは、気張らなくていいから。ふつうに楽しくお酒飲もう」
この人は本当に気遣いのカタマリ、
アキ先輩とはまた違ったまぶしさを持っていらっしゃる。
アキ先輩の明るさと優しさ、それから俊明さんの気配りとやわらかさが、ほんのひと欠片だけでも、半田くんにあればいいのに。
そういえばきょうはまだ声すら聞いていない気がする。
みんなの輪から外れてコチョコチョとスマホゲームしているのを見かけただけだ。
なんでおまえがいるんだよ、
とか、そんな文句さえも言われないと、なんだかそれはそれで気に入らない。
ひょっとして無視されているのかな。
こないだ、あたし、そんなにうっとうしかったかな。



