「なあ、キミが、アレなんだよな? 洸介ファンの」
冷やかすように訊ねたアキ先輩に、
「うわ~そうです! 洸介のことホンマにずっとメッチャ好きで!」
と、新奈がちょっと前のめりになりながら答える。
ああ、せめてサンを付けてくれよ、サンを。
「あはは! マジで元気いいな? おーい洸介、ちゃんと挨拶しろよ」
アキ先輩がそう言うと、うしろからひょこっと背の高い男性が顔をだした。
先日ほどは眠たくなさそうな、ギタリスト。
「……どうも。こないだ、ライブ来てくれたって。ありがとう」
「こちらこそいつも素敵な演奏ありがとうございます! ライブもメッチャ行ってます! あっ、ワタシ山下新奈っていいます! よろしくお願いします!」
「瀬名洸介です、よろしくお願いします」
「あ、大丈夫です、知ってます!」
このふたりは頭を下げあいながらコントでもしているのか?
やれやれと思っていると、アキ先輩の隣にいた俊明さんとばっちり目が合った。
反射的にぺこっと頭を下げる。
彼は先日サイドスタンドで会ったときと同じ顔で優しく微笑み返してくれた。
本当に、素敵な笑顔。マシュマロよりもやわらかい。
やっぱりなんか、和むんだよなあ。
「――え、ちょっと、なになに? やっぱりトシくんのアレなのかい?」
そこにいきなり落ちてきた、ちょっとハスキーな声。
ハスキーだけどすごく色っぽい、大人の声だ。
そちらに視線を移すと、ザ・強め美人!という感じの女性がいて、興味深そうにあたしを見ているのだった。
とても小柄で、華奢な体。本当に細い。
ちょっとパンチしたら折れてしまいそうなくらい。



