フキゲン・ハートビート

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  ☔︎


「ねえ、なにその服……」


顔を合わせるなりそう放ってしまったのは仕方がない。


「なにがやねん?」


不満そうな表情を浮かべた新奈に聞き返された。


「いやあ……うん、ていうか、だって、ただの飲み会だよ、場所も居酒屋だし」

「はあ!? “タダノ”飲み会とはちゃうやん! メンバーがオカシイやん!?」


まあ、たしかにそうなんだけど。

それにしたって、そんな背中のあいた服、どこのパーティーに参加するつもりで来たというわけ。


「きょうは大勝負やねん。洸介と会って話せるねんで?」

「まあそうだけどさ……」


でもたぶん、洸介先輩のカノジョさんも来るんじゃないのかな。
そこらへん確認するのをすっかり忘れていたけど、ライブ後に堂々と連れ帰るほどの存在だ。


新奈には、洸介先輩に恋人がいる、という事実は伝えた。
そんなんカンケーないって一蹴された。

カンケーない、とは?


「べつにいいけど、おかしな期待しちゃダメだよ。あと変なことしでかさないでよ」

「わかってるって。ウチも洸介にヤバイやつって思われたくないし」


ほんとかよ。


新奈はけっこう肉食系女子なのである。

洸介先輩に対する気持ちはただのアコガレなのかもしれないけど、その色気ムンムンの服装、完全にそのつもりでしょうよ。


それに比べてあたし、スキニーデニムにゆるい白シャツって、さすがに手を抜きすぎたかな。

でも、はりきってやがるとか思われるのも、いやだしな。