その夜、1時間ほど悩んだ末、ついに俊明さんにメッセージを送った。
『真島蒼依と申します。よろしくお願いいたします。』
という、たったそれだけの文章を考えるのに30分もかかった。
読み返して、キモチワリッ、と思う。
どっかの営業マンかよ。
いや、それは営業マンに失礼だ。
返事は翌朝早くに届いていた。
『ありがとう、こちらこそよろしくお願いします』
絵文字も顔文字もスタンプも、読点すらない文面だったけど、画面のむこうにあの優しい顔が浮かんで、なんとなく和んだ。
同時におかしな想像をしてしまう。
もしあの夜、半田くんとメッセージを交換していたとしたら、彼はどんな文面を送ってきていたのだろう?
一言、二言のみ、もしくはスタンプだけだったり?
いや、返事が来るならどんなにいいか。
あの男のことなので、開封だけして無視するなんてこと、ぜんぜんあり得るはず。
俊明さんとのメッセージは3往復で終わった。
“ちょっとした飲み会”についての日程と場所、それから新奈の参加の有無について。
確認するまでもなく、どうせ新奈は絶対に来るだろうから、参加でお願いしておいた。
そのあとで新奈に聞いてみたら、すぐさま電話がかかってきて、案の定半狂乱になった彼女に一連のことを説明させられたのには疲れたし、
「そんなもんバイトかわってもらってでも行くに決まってるわ!」
と、怒ったような口調で言われたのには笑った。
あーあ、本当に変な展開になってしまったな。
あたしは本当に来週末、あまいたまごやきのみなさんと“飲み会”をしているんだろうか?



