フキゲン・ハートビート



「……なんだよ、マジで。なあ、そういうの反則じゃねえの? 花婿ってのは情緒不安定なんだから、勘弁してくれよ」


泣きながら、その花婿が言う。


すごくきれいな涙だと思った。


男泣きというの、これまであまりわからなかったけど、いいなあ、と思わずにいられなかったよ。

ドラマに出てくるような女々しいのとはぜんぜん違う。


「ウゼェ」


寛人くんの大きな手のひらがぽんと頭に乗っかった。

あたしもアキ先輩に負けないくらいぼろぼろに泣いていたので、いまのウゼェは、ひょっとしたらあたしに向けられたせりふかもしれない。


「なんで蒼依が泣くんだよ」


なんでだろうね。
わからないや。


でも、とても、感動したんだ。

アキ先輩に敵わないって、尊敬してるって、そう言った寛人くんがかっこよくて、心が震えたんだ。


あたしの好きになった人は、やっぱり宇宙一いい男だった、って。


寛人くん。

兄弟って、いいね。

最高だね。


こういう関係、ほかには絶対ないね。