「おまえには甘えてばっかでワリィと思ってるよ。そろそろトシにも落ち着いてもらいてえし、結婚を機に、オレもそろそろ大人にならねえとな」
「ははっ、うん、そうだな、俺も早く落ち着きたいかな。でも、アキはそのまま、アキのままでいいと思ってるよ」
いつものなごみ顔が答えた。
俊明さんは圧倒的に優しくて、大人で、人間生活5回目くらいなんじゃないかと、何度でも思ってしまう。
「結婚おめでとう、アキ、みちるさん。幸せにな」
「ありがとう」
小さな拍手が起こる。
つられてあたしも拍手する。
会場を見渡して、ちょっと照れ笑いをしたアキ先輩は、続いて洸介先輩に向き直った。
「洸介。なあ、中2のころにはじめて会ったとき、まさかこんなずっと一緒にいるとは思ってなかったよな? 最初はすっげえウザがられてたし、オレ」
眉を下げて笑うアキ先輩に、洸介先輩も口元に笑みを浮かべながらうなずいた。
ふたりにはふたりの歴史があるのだと、その瞳の深さを見て、思い知った気がした。
「口数の少ない洸介の、ガツンとくる一言に何度救われたか。自分の大事なもんをちゃんと大事にできる洸介に、オレは実はけっこう昔から憧れてるんだ。いつも、ありがとうな、ほんとに」
「うん。俺も、アキがいてくれてよかったって何回も思ってる。アキは声とみちるさんのこと大事にしてくれたらいいよ。結婚おめでとう」
洸介先輩にとっての“大事なもん”の、大部分のところに、アキ先輩はいるのだろうな。
アキ先輩と洸介先輩のあいだにある絆は、親友だとか、そういうものを軽く超越している気がする。
男の友情って、女のそれとは、ぜんぜん違っているね。



