フキゲン・ハートビート



ふと、屋内がざわつきはじめたのがわかった。

新奈が行こうと言うので、仕方なくついていく。



人混み――というほどではないけど、その真ん中に、4人はいた。

アキ先輩、洸介先輩、俊明さん、それから寛人くん。


そこだけ、なんとなくオーラが違っていて、ああこの人たちは芸能人なんだな、と実感する。

ああ、そうか、あたしはゲイノウジンと、つきあっているのか……。


さっきのにぎやかな空気とはうって変わる静寂のなか、ぴりりとした緊張感が走っていて、なにがあったんだろうとちょっと焦る。


突然、アキ先輩が息を吐いて笑った。

いつものパッと明るい笑顔じゃない。
どこかうなだれているのを隠すような、押し殺すような、笑い方だった。


「マジで、やるんすか?」


そして言った。


「うん、いい機会じゃん」


あまいたまごやきのデビュー時から支えてくれているらしい、マネージャーさんの浅井さんが答えた。


いったいなんだろう?

なにが始まるというのだろう……。


「えー……じゃあ、まず、トシに」


アキ先輩がそっと口を開いた。

迷うように何度か鼻を鳴らして、それから彼は俊明さんに向きあった。


「いつもさ、オレらの面倒見てくれてありがとうな」


そうして続いた、その深みのある声で、なんとなく、これからなにが始まるのか、理解できてしまった。