「――幸せだねえ」
シャンパンをひとくち飲む。
ついでに、新奈の持ってきてくれたシュークリームをいっしょに食べた。
おいしいな。
幸せだな。
いろんなことが、本当に幸せ。
「みちるさんも、季沙さんも、本当に幸せそう。よかったなあ」
「蒼依もな?」
どこか声をはずませながら、新奈がコッチに向き直った。
「ウチは、蒼依がボロボロやったころをいちばん知ってるからね。いま蒼依が幸せそうでホンマにうれしいねよ。チャンヒロにメッチャ感謝してるねん!」
こういうことを素直に言える、言ってくれる新奈と、友達になれてよかった。
あたしはチャンヒロを差し引いてもじゅうぶん幸せ者だということを、この女の子はきっと、知らないでいるのだろう。
「なー、覚えてる? ウチが、チャンヒロとつきおーたらええのにーって言うたの」
「うん、覚えてるよ。あのころはほんと、まさかこんなことになるなんて想像すらしてなかったけどね」
「あはは、うん、ウチも。いやホンマにつきあうんかい!て、報告されたときズッコケそうなったわ」
なんじゃそら。
からかわれていただけかい、とこっちがズッコケそうだ。
でも、新奈のあの一言は、あたしのなかにいた半田寛人という存在を、やっぱり少しだけ変えてくれた気がする。
そう思うと、すべてが、とても不思議。
あれから、いろいろ、あったね。



