フキゲン・ハートビート



話している最中、事務所の社長さんが挨拶にやって来て、寛人くんもそのままつかまってしまった。

あたしがその場にいてもしょうがないし、話もわからないので、シャンパンを持ってテラスへ行くと、ピンクのドレスを着た新奈がひょっこりやって来た。


「いい式やったなぁ!」


ケーキとシュークリーム、それからワッフルをこんもり乗せた皿をこっちに差しだしながら、新奈が感嘆のため息まじりに言う。


「ね、ほんと。感動して泣いちゃったよ」

「あはは! 蒼依と季沙さんはホンマ泣きすぎやからな~」


そういえば季沙さんもめちゃくちゃ泣いていたな。

みんなで写真撮影をするとき、絶対ブスだよう、となおも半泣きで言っていて、洸介先輩が笑っていた。


季沙さんと洸介先輩は、仲良しだ。

あの夜、病室で痛いほどの涙を見せていた季沙さんが、もう嘘みたいに。


実はおとといの夜、みちるさんがバチェレット・パーティーをしたいと言うので、ささやかな女子会を開いた。


それぞれいろんなことを話して、聞いた。

あたしはやっぱり、寛人くんとつきあうに至るまでの経緯をそりゃもう細かくしゃべらされたし、みちるさんはアキ先輩からのプロポーズの言葉を教えてくれた。


季沙さんは病気の話をしてくれた。

すごく大変で、つらいのだろうけど、なんだろう、洸介先輩と季沙さんなら絶対に大丈夫って、なぜか心から信じられる。


だって、ふつうに想像できるから。

ふたりが結婚して、そのあいだにかわいい子どもがいる、そういう風景が。