フキゲン・ハートビート



そのあと、披露宴という、形式ばったものはなかった。

どちらかというとパーティーみたいな感じで、みんな好きに飲んだり、食べたり、しゃべったり、写真を撮ったり。

こういうフランクな、自由な感じがまた、アキ先輩たちらしくて素敵だ。


「アキ先輩、みちるさん! おめでとうございますっ」

「……おめでとう」


やっとお祝いの言葉を言えた。

ふたりはずっといろんな人につかまっていたから、なかなか近寄ることができなかったんだ。


おれはいい、と断固拒否するネコ顔も、無理やり引きずって連れてきた。

お兄ちゃんと、お姉さんになった人なんだから、こういう場での挨拶は大切だと思って。


「蒼依ちゃん、寛人くん! ありがとうねー」

「ありがとう。来てくれてうれしいよ。寛人もな」


まぶしい笑顔だ。

美男美女だというのももちろんあるけど、きょうはそれだけじゃない。


興奮が抑えきれず、式よかったですとか、ドレスきれいでしたとか、感動しましたとか、まくしたてるあたしに、ふたりはずっと笑顔で答えてくれた。


「あのっ、おなか……触ってもいいですか?」


勇気を出して言ってみた。

みちるさんは目を細めてうなずいてくれた。


「うん、いっぱい触ってあげて」

「わあ……!」


みちるさんのおなかには、いま、新しい命が宿っている。

予定は9月だと聞いている。


「元気な赤ちゃんを産んでくださいね!」

「ありがとう。蒼依ちゃんの姪っ子か甥っ子だもんね?」


それはさすがに気が早いけど。

でも、ふたりの赤ちゃんが、本当に、本当に、楽しみだな。


季沙さんも、まるで自分のことのようにみちるさんの妊娠を喜んでいて、それがまたうれしかった。


季沙さんたちはいま通院しながらがんばっているらしい。

ふたりも来年中には結婚すると言っていて、それも、いまから楽しみだな。