フキゲン・ハートビート



みちるさんのご両親はいなかった。

少し事情は聞いたけど、やっぱりちょっとさみしいものだ。


そういうわけで、バージンロードを歩いたのは俊明さんだった。

普段は落ち着きすぎているくらいのなごみ顔が、もう見るからに緊張していて、おかしかった。

でも、みちるさんも俊明さんも笑っているし、ふたりを待つアキ先輩も笑っているから、厳かというよりは、和やかな雰囲気だ。


ああ、きれい……。

肩のあいた、スレンダータイプのウエディングドレスが、かっこよくてきれいなみちるさんに本当によく似合う。


真っ白なみちるさんと、真っ白なアキ先輩が誓いのキスをした瞬間、とうとうこらえきれずに泣いてしまった。


これからふたりは、家族になるんだ。


ふたりだけじゃない。

これからみちるさんには、新しくお父さん、お母さんと呼べる存在ができて、寛人くんという弟もいて……。


そういうことを考えるとどうにも我慢できなかった。


うれしい。

大切な人たちの、大切な瞬間に立ち会えていることが、幸せでしょうがない。



フラワーシャワーはみんなでした。

ブーケトスは、新奈が見事にキャッチした。


あんまり必死なので笑ってしまうと、


「このなかでカレシおらんのウチだけやねんで?」


と、まじめな顔で言われてしまった。


本当に笑顔の絶えない式だったな。

新郎新婦がずっと笑っているから、ゲストのほうもみんな、つられてしまったのかもしれない。