フキゲン・ハートビート



あれから2か月くらい、何度も何度も、連絡しようと思った。

でもどうしたって、最後の踏ん切りがつかなくて。


成人式で再会したらちゃんと話をしよう、

なんて、甘っちょろいことを考えていたら、結局コレだもんね。


ほんと、バカ。



「――そういや、きょうの同窓会にハンダも来るらしいね?」


人もまばらになってきて、そろそろ解散というとき、ミナミが唐突に言った。


「え、ウソ! マジで?」


アヤが興奮したように声を上げる。


「マジマジ。最初は不参加にしてたんだけど、年末あたりに急に参加できることになったらしいって、マッチャンが言ってたよ」


マッチャンてのは当時の委員長で、今回の同窓会の幹事さん。

いまでもシッカリしているのは変わらないけど、当時のダッサイ眼鏡スタイルがウソのようにオシャレ大学生になっていて、感心したというか、笑ってしまったというか。

日本でいちばんの大学に通っているらしい彼は、スーツがビシッと似合うさわやかお兄さんに変身していたのだった。


「あ~、でもアオイはべつにうれしくもなんともないかー。仲悪かったもんね? ハンダと」


ミドリの袖を揺らしながら、ミナミが言う。


そんなにあからさまに仲悪かったかな、あたしたち。

思わず苦笑で返してしまった。


「でもいまあいつ芸能人だよ? もしかしたら山崎ケンタとも知り合いかもしれないわけじゃん!? それってやばくね!?」


興奮すると言葉遣いが昔に逆戻りしてしまうアヤ、山崎ケンタが好きなのか。

たしかに昔から、強めより、甘めの男が好きだったもんな。


「夜の同窓会が楽しみだなぁ」

「ねー」


うれしそうにキャッキャとはしゃぐふたりに、あたしも曖昧に返事をして、その場は解散になった。


夜は、中学の同級生みんなで立食パーティー、らしい。

てきとうにキレイめなパンツスタイルで行くつもりだったけど、スカートにしたほうがよかったかも、なんて、なんだか意味のわからないことを思う。