フキゲン・ハートビート

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成人式の日は、雲ひとつない快晴だった。


朝っぱらからいつもよりキモチ濃いめの化粧をして、髪をつくってもらい、重たすぎる晴れ着をぐるぐる着付けてもらう。

振袖はやっぱり窮屈だし、動きづらくて、見た目はきれいだけど、着るのはあまり好みじゃない。


それでも、あたしの振り袖姿を見るなり、お母さんはちょっと泣いた。


お父さんにはギリギリまで実家の庭で写真を撮られた。

でっかいカメラをかまえて、コッチ向けとか、アッチ向けとか、本当にうるさいし、本当に恥ずかしい。


ちなみに、マロだけは、やっぱり興味なさそうにしていた。


会場へ向かうまでのあいだ、すれ違うほとんどの人に「おめでとうございます」と言われた。

ぜんぜん知らない人からもそう言われるのは、とても不思議な現象だった。


成人式、メンドイな、と思うこともあったけど、きょうはあたしが思っているよりもずっと、特別な日なのかもしれない。