「……お互いの気持ちって、言ったって」
それでもなお言い訳くさい自分が嫌になる。
すぐに逃げ道を作りたがる、
これは本当に、悪い癖。
「嘘だろ?」
アキ先輩はあきれたってふうに息を吐いた。
洸介先輩も、俊明さんも、ちょっと困った顔で笑っている。
「なに言ってんだよ。寛人はもうとっくに蒼依ちゃんのこと――」
そのとき、アキ先輩のスマホが勢いよく震えだした。
どうやらみちるさんからの着信らしかった。
なんだよ、きょうはメシ行くって言ってあったのにな、つーかみちるさんも季沙とメシ食うって言ってたのに、
とか、なんとか言いながら、それでもチョットうれしそうに受話器を耳に押し当てるアキ先輩は、すっごくみちるさんのことが好きでしょうがないんだと思った。
その顔色がサッと変わったのは、そのあとすぐのこと。
いったいなんだと疑問に思っていると、整った顔が、隣のポーカーフェイスに向いたのだった。
「――洸介。季沙が、大変だって」
空気が、凍る。



