フキゲン・ハートビート



「……あたし、寛人くんが、すごく……すごく、好きです」


自分でも驚くほど、その言葉は自然に口から出てきた。


はっとしたのは数秒後。

我に返り、思わず右の手のひらで口を押さえると、3人のお兄さんたちは顔を見合わせて笑ったのだった。


「……まあ、知ってたよな」

「うん、知ってた」

「これで好きでもなんでもなかったら詐欺だな」


なんだよ。
本当に、優しいのかいじわるなのかわからない人たちだな。

恥ずかしいじゃんか。


アキ先輩はひとしきりくつくつと笑って、それからその顔のままあたしを見つめた。

じっと。
どこか、試すように。


おかしな告白をしてしまったあとだし、死ぬほど恥ずかしかったけど、くやしかったから逸らさないでいたら、やがて彼は息を吐いて笑った。


「それ、ちゃんと本人にも言ってやってな?」


それはちょっとばかし、むずかしい課題かもしれない。


「あの……あたし、スッゴイひどいことしちゃったし、いまさら」

「じゃ、その分ウチの末っ子のこと幸せにしてやってよ」


有無は言わさねえぜ、という顔だ。


「だってさ、いらねえだろ? お互いの気持ち以外、ほかには、なんも」


かっこいいことを、言うんだな。


かっこいい。知っていたよ。
中学のころからずっと、アキ先輩は例外なく常にかっこよかったもん。

いつもキラキラとした光を身にまとった、とても眩しい人だった。


でも、こんなに心が震えたこと、なかった。

全身がびりびり痺れているみたいだ。