「あのさ。オレらわりと、蒼依ちゃんは寛人のナイトだって思ってるよ」
ナイト、て。
つまり、寛人くんがオヒメサマということ?
なんだよ、それは、ちょっとおもしろいじゃんか。
「……ぷっ」
笑いがこぼれてしまう。
3人のハリウッド男優たちが少し驚いたようにコッチを見つめている。
寛人くんは、いいな。
こんな素敵なお兄さんたちが傍にいて、こんなに大切に思ってもらっていて、いいな。
お門違いかもしれないけど、すごく安心した。
いますごく、ほっとしている。
だって、あたしは、孤独な半田寛人しか知らないから。
教室で、ひとりぼっちでいる、あの姿の印象がどうしても強いんだ。
そんな彼が心を開いてくれつつあったこと、本当は自覚していたよ。
ちょっとずつあたしのこと受け入れてくれているんじゃないかって、どこかで確信もしていた。
わかっていた。
彼がずっと、ぶきっちょな優しさをくれていたこと。
あまりに尊い時間を、何度もふたりで共有していたこと。
なのに、あたしはひどいやつだ。サイテーのクソヤロウだ。
ひとりで泣くなと、言ってくれたのに。
何度も名前を呼んでくれたのに。
定期から始まって、ゲロ吐いたり、Gの退治をしてもらったり、いろいろ迷惑もかけてしまったのにね。
そう、あの夜、あたしたちはたしかに、誰よりもいちばん近い場所にいたのに。
無視してしまった。
きつく拒絶してしまった。
ドアのむこう側にいた彼の気持ちを、あたしは考えていたかな。
ひょっとしたらあたしは、寛人くんのことを、深く、深く、傷つけてしまったのかもしれない。



