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  ☔︎


――ハリウッド映画かよ。


この光景を見てそう思わずにいられる人間が、はたしてこの世に存在するのか。


「ひえ……」


ハリウッド女優のように華麗な反応をすることができなかったのがたいそう悔やまれる。

それでも、彼らは神々しくそこにすらりと立って、それぞれの優しいまなざしをこっちに向けてくれるのだった。


「お疲れさま、蒼依ちゃん」

「お疲れ」

「よう、お疲れさん。待ってたよ」


メタリックグレーの車の前に、
俊明さん、洸介先輩、そして、アキ先輩。


バイトが終わり、店の外に出てみたらそんな光景が広がっていれば、そりゃ後ずさりの1歩や2歩くらいはするでしょう。


それにしても、こうして並ばれるとものすごいオーラがある。

そうだ、たまにすっかり忘れそうになるけど、この人たちって、芸能人なんだった。


「あ……いや、え……?」

「あー。ワリィけど、腹減ってるから説明はあとな?」


ニッと笑ったアキ先輩に、なかば無理やり、助手席に押しこまれた。

運転席には俊明さんが座った。

うしろに座っている金色と黒色のイケメンは、長い脚を窮屈そうに曲げて、そこに収まっていた。


「蒼依ちゃん、焼肉は好き?」

「あ……ハイ、とても……」

「じゃ、これからお兄さんたちと肉食いに行こう」


ハンドルを左へきりながら、俊明さんが軽快に言った。

うしろでアキ先輩がくつくつ笑っている。
その隣で洸介先輩はずっと黙っている。


なんだ、いったいどういう展開なんだ、これは。

ふつうにコワイんですけど。


ていうか、あたしのこのあとの予定の有無とかは、いっさい無視か!