フキゲン・ハートビート



「ふうん。だからおまえ、そんな姿勢いいんだな」


でも、彼は想像していたのとぜんぜん違うことを言った。

というか、ナナメ上の答えすぎて、こちらはぽかんと口をあけるしかない。


「いいんじゃね。背もそこそこあるし、普段から綺麗に立ったり歩いたりもして、なんか飛行機乗ってそう」


なんか飛行機乗ってそう、

って、なんだかな。笑っちゃう。


でも、たぶん、褒めてくれた……の、だよね?


身長に関しては偶然の産物なので、そこそこ大きく産んでくれたお父さんとお母さんには感謝している。

姿勢は……まあ、普段からひそかに気をつけたりもしている。


「あとね、英語も勉強してるんだよ。こう見えて、日常会話なら困らない程度にできたりするんだよ」

「へえ」

「そこは褒めてくれないのかよ」

「いや、素直にスゲェと思うよ。おれはガチガチの受験英語しかできねーし」


結局大学は受験しなかったから役に立たなかったけど、
と、彼は笑った。


さっきからたくさん笑っているな、と思う。

熱のせいかもしれない。


「それに一晩中つきっきりで他人の看病できるくらい、文句なしにホスピタリティの精神も持ちあわせてるし、おまえCA向いてるよ」


それは、どうかな。

たしかに目の前に病人がいたら、それが誰であろうと放っておけないだろうけど、看病もしちゃうだろうけど、それとこれとはまたベツモノな気がする。


うまく言えないけど。


でも、こんなに必死になって心配したり怒ったり、こういうのは、相手がこの男だからだと思うんだよ。


「……そうだよ。だから、これ食べたらまたシッカリ寝かせるからね!」


寛人くんが心底ウンザリって顔をした。

それを見て思わず笑うと、なに笑ってんだよって怒られた。


ホントすぐ怒るんだからな。病人のくせして。