「……ん、そっか。おめでとう、アキ、みちるさん」
洸介先輩が言った。
「ありがとう」
その低い声に答えたアキ先輩は、どこかほっとしたように口元を緩ませていた。
「いやあ。ワリィな、先越すことになって」
「うん。俺も早くしたい、ケッコン」
「洸介、おまえさ、プロポーズくらいちゃんとしてやらねえとさ……」
たしかに、とつぶやく洸介さん。
それもぜんぶ慣れっこってふうに、困った顔で笑う季沙さん。
少し遅れてオメデトウを言った俊明さんに、アリガトウを答えるアキ先輩とみちるさんカップル。
ああ、あまいたまごやきというバンドは本当に仲が良いんだな。
中学、高校時代からずっと続いていく関係というのは、けっこうありそうで、なかなかないものだと思う。
あたしと新奈も恐縮ながらオメデトウゴザイマスを言った。
とてもうれしそうに笑ってくれたふたりを見て、またいいなって思う。
結婚って、幸せそのものだなって。
「内輪だけになると思うけど、式は挙げるつもりだから、蒼依ちゃんも、新奈ちゃんも、ぜひ来てね!」
みちるさんがとびっきりの笑顔で言ってくれた。
それを見て、この人には純白のウエディングドレスがすごく似合うんだろうって確信した。
このきれいな女性が花嫁になる日が、
あの憧れていた先輩が花婿になる日が、
待ち遠しくてしょうがない。
あたしなんかほとんど関係のない部外者なのに、すっごくうれしくて、いまからそわそわしてしまう。



