フキゲン・ハートビート



鉄板を囲み、ビールを飲んだりお肉を食べたり、好き勝手しているみんなの輪に入った。

集合をかけたらしいアキ先輩はなおもトングを握っている。
肉焼き係は継続中らしい。


「よしよし、みんなそろったな」


カチンと一度トングを鳴らしたアキ先輩が、ぐるりと全員を見まわした。


「えー。腹もふくれたところで、オレからひとつ、重大な発表があります」


とたん、ぴりっとした緊張感が走る。

アキ先輩がどことなく緊張した面持ちなので、みんなそれにつられているのだと思う。


それでも、あたしの対角線上、目の前にいる寛人くんだけは依然として興味のなさそうな顔で、ななめ下に視線を向けたままだ。


ゴホン、と咳ばらいをする声が聞こえた。

あわててアキ先輩のほうへ視線を戻す。


彼はしばらく考えるようにくちびるを内側に巻きこんだあとで、とうとう意を決したように顔を上げた。


「――オレたち、年明けに籍入れることにしました!」


セキ、いれる……?


セキ……って、籍?

オレたちって?

アキ先輩とみちるさんが?


結婚するってこと!?


「……子どもできた?」


しんと静まり返る空気を裂いたのは、洸介先輩の低い声。

どこか間の抜けた発言に、このぴりりとした空気が少しゆるんだ気がした。


「ちげーよ」


アキ先輩が笑う。

中学のころは見たことのなかったような、穏やかな笑い方だ。


「まあ、結婚も決めたし、もういつ出来てもいいって思ってるけど」

「あたしも来年30になるしねえ」


さんじゅう!?


嘘でしょう。

アキ先輩より年上なことは知っていたし、たしかに大人っぽい、お姉さんな雰囲気はあるけど、せいぜい25歳くらいかと思ってたよ。


ということは、アキ先輩との歳の差、7歳か。

ふたりはいつからおつきあいしているのだろう……。