フキゲン・ハートビート



あのころよりちょっとだけ大人になったアキ先輩。

それなのに無邪気な笑顔はそのままで、なんだか急になつかしさがこみあがる。


やっぱり、相変わらずかっこいいなあ、アキ先輩。


MCは、ほとんどをアキ先輩が進行し、たまにベースの俊明(としあき)さんが参加するかたち。

あたしが中学生のころからそれは変わっていなかった。

ちなみに俊明さんは洸介先輩の高校の先輩なので、接点もないし、この人のことは本当によくわからないのである。


半田くんと洸介先輩は、ふたりの言葉を聞きながらうなずいたり、興味なさそうに楽器をいじったり。

半田くんって、中身だけでいえばどちらかというと洸介先輩に近いかもしれないな。


それでも半田兄弟って顔だけはものすごくそっくりなのだ。

アキ先輩と同じ顔なのに性格が正反対なのが、半田くんの実にもったいないところ。


ライブはその後も右肩上がりに盛りあがって、気がつけばあたしも声が枯れるほど叫んでいた。

約3時間弱のライブで、あまいたまごやきは15曲を演奏して、半田くんと洸介先輩はたった一言ずつしゃべっただけだった。



「――あー楽しかった!」


外の空気が涼しい。


それくらい、暑かった。

5月の夜はまだ肌寒いはずなのに半袖でじゅうぶんだ。


ライブの余韻にひたりつつ、とにかくギタリストについて夢中で語る友人の話を聞きながら、ふたりで駅に向かった。