「ふう……ごちそうさまでした」
でも、キッチンでつくってキッチンで食べてキッチンで片付ける、これほど合理的なことはないと思っている。
こんなのもきっとひとり暮らしだからこそできること。
あたし、こんなで、これから嫁のもらい手があるのかな。
「なぁんて……」
言いながら、へらりと笑ったとき。
ひとりごとをつぶやいてひとりで笑ってるいるなんてさみしいやつだな、
なんて思う暇もなく、カサリと、視界の端っこで動く影をしっかり見てしまった。
「……え」
カサ、
カサカサカサ、
なにも聞こえないはずなのに、そんな効果音めいたものが伴っている気がするのは、どうして。
「ひっ……!」
でも、だって、知っている。
あのフォルム。あの色。あの動き。
……ああ、黒い悪魔、ブラック・デーモンなのか、あれが。
あれが、ウワサに聞く、ゴキブリというやつなのだな……!



