「ほな、その人なんかなあ」
新奈が少しむずかしい顔をした。
「なにが?」
「アキくんには年上のカノジョがおるらしいねんけど、洸介にも同棲中のカノジョがおるって噂があんねんな。あーほんまなんかなー。ショックやぁ」
べつにいいじゃないか。
彼らもいい歳なわけだし、それになんといってもバンドマンなんだから、むしろカノジョがいないほうが心配案件なのでは。
それよりなにより、そんなことに本気でショックを受けている我が友こそ、あたしはいちばん心配だ。
「あーあ。カノジョは洸介に愛されてるねんなー。ええなぁ」
「なにがそんなにいいの」
「だってよう考えてみ!? あんな淡白で無口な、ギター以外には興味ありませ~んて感じのオトコに愛してもらえるねんで!? すごない!? 奇跡やで!?」
たしかに、そう言われればそうかもしれないけど。
でも、もし洸介先輩のカノジョさんが本当にあの幼なじみさんだというのなら、ふたりがつきあっているのはとても自然なことのような気がするし、納得できる。
「はあ……ウチが洸介のカノジョになりたかった……」
まだそんなことを言いながらうなだれる新奈には気づかれないように苦笑して、ペットボトルのお茶をいっきに飲み干した。



