「西の国だ。噂によると南の別の町で戦いがあったらしい。食料でも尽きたか、この村で休憩するらしい」
「可哀想に、村の入り口にいた男達は首をはねられたよ。見せしめかなにか知らんが、やつら獣みたいにそこら中に火をつけて家を燃やして歩いているらしい。見つけ次第皆殺しだと叫んでいるさ」
投げやりにダンおじさんが言った。
リリーさんのすすり泣く声が聞こえた。
「ママ、私達しぬの?」
「大丈夫、大丈夫だよエリシア。パパがついているからね」
ダンおじさんも泣いていた。
微かに聴こえる爆音と悲鳴に混ざり、時計の秒針がやけに大きく聞こえた。
お医者様の胸が丁度私の耳にあり、ドクドクと脈打つ音で安心できた。



