ファミリー

そこで目にしたのは叫び出したくなる
ような悪鬼の形相でも、ふた目と見ら
れぬ崩れた顔でもなかった。

噂どおりだった。

整った顔立ちの少年が、少しまなじり
の上がった大きな瞳でまっすぐに高森
を見返している。

細い体越しに背景が透けて見えるわけ
ではない。

輪郭がぼやけているわけでもない。

半袖のシャツはまぶしいくらいに白く、
グレイの半ズボンはきちんとプレス
されていた。

今が真冬であることを思えば、その服装
はさすがにおかしい。

しかし他には格別異様な気配など
感じない。

瞬間、高森は普通の子供が深夜の病棟に
迷い込んだのかとさえ思った。