ファミリー

叫んで逃げ出すか、それともおもしろ
がって幽霊を観察するだろうか?

高森は苦笑いを浮かべた。

少年は窓際に置かれたベッドの手前に
立って高森を眺めている。

確かに友好的な笑みを浮かべては
いない。

それに出会った時から一言も口を
きこうとしない。

それでもあからさまな敵意も感じない。

きっと自分に用があるのだろう、と
高森は判断した。

どうすれば霊体と意思の疎通ができる
のか見当もつかない。

取りあえず二、三歩歩み寄り、そっと
声をかけてみる。

「僕は高森悟。
十日前にここに赴任してきた内科医だ。
今夜は当直だから、この部屋に泊まる」