美しく波打つコバルトブルーの上で鬱うように時は過ぎる。
何も知らないというには余りに自虐的にヘルメスは言った。
「俺はまだ、弱い」
「何言っちゃってんの?今更」
「別に」
「…あの一件は貴方だけの責任じゃない」
「あるとしたら俺だし。あいつら、お前に付け込みそうだ」
すこし場違いな気がしたイーリスは多少後ずさる。
それを感じてゼウスがクスッと笑った。
「なあイーリス?お前も知っとけよ」
「いいわ」
「いいじゃん、別に」
「…おいお前、イーリスは」
「信用できない?」
「まだ幼い」
「ハッ!笑わせる」
「なんかキャラぶっこわれてるけど」
何かいいたげにヘルメスが言う。
「…いつものことだ」
「苦労してんだ」
「いやそうじゃない」
それに被せるようにゼウス。
「俺さイーリス、まだ話してなかったよな。俺の夢」
ゼウスが微笑んだ。
「戦うために戦う」
「どういうこと?」
「何かさ、イーリス運命って信じてる?」
「いいえ」
「でもあるんだよな~、運命宿命」
「何が言いたいの?」
「神に逆らいたいんだ。俺」
ゼウスは瞳を輝かせた。
「本当の目的は分からないけどじっとしてたら負けそうだから。根拠はないけど絶対勝たなきゃいけない。敵は分かってる。だから、勝つんだ」
「用はだ。神をも裏切りたいんだと」
「だって悔しいし。生まれた場所で大切な人も未来も奪われるとか」
「…無謀だ」
「ははっ!」
ゼウスは人を食ったような嘲りの笑顔で言った。
「この世界は腐ってる」
「!!」
イーリスは今更、ヘルメスの言いたい事を悟った。
いつもと違うのが普通なんじゃない。
いつもが、素がこれなんだ。
ゾクッとするほど綺麗な笑顔はコバルトブルーによく映えた。


